島根県西部の石見地方に古くから伝わる伝統芸能「石見神楽」
日本神話を題材にした演目、哀愁漂うお囃子と勇壮な舞、豪華な衣装と多彩な面が特徴です。
2019年、石見神楽にまつわるストーリー「神々や鬼たちが躍動する神話の世界」が日本遺産に認定。
“石見神楽面”は、このストーリーを語る上で不可欠な52の構成文化財群のひとつです。
ご自身も神楽を舞っておられるという、石見神楽面職人の花田さんにお話を伺いました。
石見神楽面への思い
- 石見神楽面の職人になったきっかけは
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この地区に神楽面を作られる方がおられて、若い頃に訪ねたときに、「自分も作ってみたい」と思ったんです。
それで神楽面づくりを習うようになったのがきっかけですね。
また石見神楽が好きなので、なんとか後世に残していきたいという思いもあります。
- 師匠の教えや教訓で心に残っていることは
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江津市の工房で修行したんですが、師匠からは神楽面づくりの技法をしっかりと教えてもらいました。
教訓としては、「神楽を残していけよ、辞めることなく作り続けろよ」というのが心に残っています。
- 神楽面でこだわっていることは
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自分としては今作ったものが一番いいと思うわけですが、経験を積むうちにだんだんと目が肥えていきますよね。
ですから未来の自分に恥じないように、そのときの自分にできる精一杯の力で作るようにしています。
- 石見神楽面の魅力を教えてください
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石見神楽面だけの魅力ということではなく、神楽の笛、太鼓、囃子、衣装などがあっての神楽面であり、石見神楽全体の魅力だと思っています。
ですから石見神楽を後世に残すためにも、神楽面づくりを続けていきたいです。
- ものづくりで大切にしていることは
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石見地方には家の新築祝いや、店の開店祝いに神楽面を贈る風習があります。
神楽で使用される方はもちろん、贈り物として贈られる方が、「良いものを作ってもらったな、贈ってもらったな」と思ってもらえるような、今現在の自分にとって、最高の自信作を作り上げていきたいと思っています。
石見神楽面の技法の継承
- 今後の目標や石見神楽面の未来について
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昔の神楽面の石膏型を起こしていって、「花田に行けばあの型があるから、また作ってもらえばいい」という風にお客様が思ってくれる、そういう工房にしていきたいです。
この地域も住民が減っていて、石見神楽を後世に伝えていくのが難しくなってきています。未来へ向けて、若い人たちが「神楽が好きだから自分も舞いたい」と感じてくれるような石見神楽面を作り続けていきたいです。
- 伝統工芸を次の世代に伝えていくために
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公民館活動として毎週第2、第4土曜日に神楽面教室を開いています。
前回は般若の面を作ったんですが、今回は鍾馗(しょうき)と恵比寿大黒の面を1年かけて作っていく予定です。
神楽は好きだけどいきなり舞うのは敷居が高いと感じている方にも、神楽面ならとにかく気軽に、簡単に、誰でも作れるんだなと感じてもらうことできます。
神楽面づくりの体験が、石見神楽自体を継承していく足掛かりの1つなればといいなと思っています。
- 後継者の育成については
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「島根県ふるさと伝統工芸品」として認めてもらったのが2022年3月のことですから、後継者を育成するという感覚はまだあまりないんですが、残せるならばどなたでもいいと思っています。
私は神楽の演目を覚えているので舞うことができますが、それを伝える相手がいなければ後世に継承はされていきません。
ですから、まずは若い人や小さな子どもたちが、神楽団体や神楽教室に気軽に参加してくれるような雰囲気作りにも努めています。
今は地域の大人みんなで子どもを見守り育てるという文化は少なくなりましたが、そういうことは必要だったなと。
良い悪いを教えたり、子ども達ときちんと接するところからやっていかないといけないなと感じています。
石見神楽面について
神楽には素顔で舞うものと面を付けて舞うものがあり、面を付ける場合は木彫り面が一般的だそうです。
石見神楽のように和紙を張り重ねた「張り子面」を付けて踊る神楽は、大変珍しいのだとか。
神楽はもともと神職が舞う厳かな神事でしたが、明治政府から神職演舞禁止令が出たのを機に民俗芸能として氏子たちに受け継がれ、石見地方に多くの社中(神楽団体)が生まれました。
同時に、本来のゆるやかな六調子神楽よりもスピード感のある八調子神楽が盛んになっていったのです。
そのため量産に向き、軽くて息がしやすく丈夫な張り子面が作られるようになったといわれています。
たしかに、重い木彫りの面を付けて動きの激しい石見神楽を舞うことは難しそうです。
制作工程を教えていただきました。
石膏型から粘土で面の原型を作り、そこに小さく裂いた石州和紙を柿渋入りの糊で張っては乾かす作業を繰り返し(面張り)、乾燥したところで原型の粘土を壊して取り外し、その後は目や鼻の穴あけ、胡粉がけ、彩色、毛植え、漆塗りなどを経てようやく完成と、とても手間のかかる石見神楽面づくり。
実際に花田さんが般若の面に彩色するところを見学させてもらったのですが、目元に黒く隈取りを描いただけで、無表情だった面が一気に恐ろしげな般若に変貌し、思わず引き込まれてしまいました。
この彩色の際に、恐ろしいものは恐ろしく、可愛らしいものは可愛らしく、朗らかなものは朗らかに、面の種類に応じてどこまで表情づくりができるか、それが職人の腕の見せどころ。
鍾馗や天狗、般若の面がずらりと壁に飾られている様子は凄まじい迫力。
見る角度によって表情が変わるように感じたのは気のせいでしょうか…まるで生きているようです。
神楽面としてはもちろん、最近は魔除けの縁起物として贈り物にされることも多いとか。
ご友人へのプレゼントにもいいですし、ご自宅にインテリアとして飾っても素敵ですね。
神話が今に息づく日本の伝統工芸品として、海外からの引き合いも増えているそうですよ。
同じ石見地方の伝統工芸品である石州和紙で作られる石見神楽面。
石見地方のさまざまな伝統工芸の匠の技が、石見神楽を支えています。
その石見神楽面を通して石見神楽を後世に——
石見神楽面職人の花田さんの奮闘はこれからも続きます。
石見神楽のように和紙を張り重ねた「張り子面」を付けて踊る神楽は、大変珍しいのだとか。
神楽はもともと神職が舞う厳かな神事でしたが、明治政府から神職演舞禁止令が出たのを機に民俗芸能として氏子たちに受け継がれ、石見地方に多くの社中(神楽団体)が生まれました。
同時に、本来のゆるやかな六調子神楽よりもスピード感のある八調子神楽が盛んになっていったのです。
そのため量産に向き、軽くて息がしやすく丈夫な張り子面が作られるようになったといわれています。
たしかに、重い木彫りの面を付けて動きの激しい石見神楽を舞うことは難しそうです。
制作工程を教えていただきました。
石膏型から粘土で面の原型を作り、そこに小さく裂いた石州和紙を柿渋入りの糊で張っては乾かす作業を繰り返し(面張り)、乾燥したところで原型の粘土を壊して取り外し、その後は目や鼻の穴あけ、胡粉がけ、彩色、毛植え、漆塗りなどを経てようやく完成と、とても手間のかかる石見神楽面づくり。
実際に花田さんが般若の面に彩色するところを見学させてもらったのですが、目元に黒く隈取りを描いただけで、無表情だった面が一気に恐ろしげな般若に変貌し、思わず引き込まれてしまいました。
この彩色の際に、恐ろしいものは恐ろしく、可愛らしいものは可愛らしく、朗らかなものは朗らかに、面の種類に応じてどこまで表情づくりができるか、それが職人の腕の見せどころ。
鍾馗や天狗、般若の面がずらりと壁に飾られている様子は凄まじい迫力。
見る角度によって表情が変わるように感じたのは気のせいでしょうか…まるで生きているようです。
神楽面としてはもちろん、最近は魔除けの縁起物として贈り物にされることも多いとか。
ご友人へのプレゼントにもいいですし、ご自宅にインテリアとして飾っても素敵ですね。
神話が今に息づく日本の伝統工芸品として、海外からの引き合いも増えているそうですよ。
同じ石見地方の伝統工芸品である石州和紙で作られる石見神楽面。
石見地方のさまざまな伝統工芸の匠の技が、石見神楽を支えています。
その石見神楽面を通して石見神楽を後世に——
石見神楽面職人の花田さんの奮闘はこれからも続きます。
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プロフィール
- 石見神楽面
- 〒697-0511
- 島根県浜田市旭町都川2115
- 【TEL】 0855-47-0557