江の川に面した島根県江津市桜江町。
この地は、室町時代から紙漉きが盛んな場所として知られ、江戸時代には浜田藩と津和野藩による石州半紙(せきしゅうばんし)の生産が地域の特産品として隆盛を極めました。特に「石州市山半紙」はその品質の高さで名を馳せ、藩の上納品として重宝されたと言います。
しかし、戦後の高度経済成長期を迎えると、紙漉きの需要が急速に減少。
かつて数百軒あった職人の家も次々と廃業し、この地で紙漉きを続けるのは佐々木さんの伯父である原田宏さんの工房のみとなりました。
その後佐々木さんが継ぐこととなり、6代目となりました。
職人となり、30年以上になる佐々木誠さんに勝地半紙(かちぢばんし)の歴史と、和紙作品づくりの想いを、妻のみゆきさんにお世話をしている猫たちから生まれた作品についてお話を伺いました。
この地は、室町時代から紙漉きが盛んな場所として知られ、江戸時代には浜田藩と津和野藩による石州半紙(せきしゅうばんし)の生産が地域の特産品として隆盛を極めました。
しかし、戦後の高度経済成長期を迎えると、紙漉きの需要が急速に減少。
かつて数百軒あった職人の家も次々と廃業し、この地で紙漉きを続けるのは佐々木さんの伯父である原田宏さんの工房のみとなりました。
その後佐々木さんが継ぐこととなり、6代目となりました。
職人となり、30年以上になる佐々木誠さんに勝地半紙(かちぢばんし)の歴史と、和紙作品づくりの想いを、妻のみゆきさんにお世話をしている猫たちから生まれた作品についてお話を伺いました。
石州勝地半紙(せきしゅうかちぢばんし)について
石州勝地半紙 6代目佐々木誠さん
- 石州勝地半紙の歴史について教えてください
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このあたりの紙漉きというのは大体室町時代には相当量漉いていただろうと地方学者が書いておられます。
でも、石州の紙が有名になるのは江戸時代に入ってからなんですよね。
最も大きな特徴は水に強いこと。
普通、和紙は非常に水に弱いんです。金魚すくいのポイはすぐ破けますよね。だけど多分、石州の紙で作ったら何匹でも掬えるっていうぐらい水に強いんです。
江戸時代には火事の時に顧客整理簿の大福帳を持って逃げるわけにいかないので、池とか井戸に投げ込んで逃げていました。水に強く建物が丸焼けになっても証文が残るので、また次の日から商売ができたということで、石州の半紙を使う商家が関西を中心に非常に多くなりました。
一躍全国的に有名になるのがその頃ということになりますね。
基本的に和紙というと楮(コウゾ)、三椏(ミツマタ)、雁皮(ガンピ)と、主な原料は決まっていて、特に楮の和紙が石州の代表的な紙になります。
よく日本一強い和紙って言われるのが石州の和紙ですね。
- 石州勝地半紙を継いだきっかけを教えてください
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母方の実家で叔父と祖父が紙作りを続けてきたのですが、僕は作っている現場を見たことがあんまりなかったんです。
国の重要無形文化財登録の取り組みの時に、勝地半紙のことが話題に上りまして。
残念ながら登録には漏れてしまったのですが、改めてすごいことをやっていたんだなと思いました。
僕は元々愛知県の芸術大学でデザインを学びました。その後東京に行き、あまりものづくりとは関係ない仕事をしてたんです。
ものづくりをもう一回やってみたいなと思った時期に、地元に戻り職人を継がないかというお話をいただきました。
それでじゃあやってみようという形でこっちへ帰ってきたのが、勝地半紙との出会いになりますね。
叔父の漉き方なんか見てるとね、非常にリズミカルで、理にかなった漉き方していました。
それを体現しようとすると、なかなか難しい。良い紙を作ろうと思えばどこまでも凝らなきゃいけなくなるし、まだ完璧に継いでいるとは言えない状態です。
- 石州勝地半紙を受け継いで工夫されたことは何ですか?
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特に明治以降、大正から昭和にかけて勝地半紙が石州を引っ張っていた時代があるんです。
柳宗悦なんかも石州と言えば勝地和紙だと書かれています。
そういうトップランナーだったものが残念なことに「半紙を漉いていない」という誤った情報により国の重要無形文化財から漏れてしまいました。
その後、新たに集落の名前である「勝地」を冠した「石州勝地半紙」と名乗る事になりました。
そして石州半紙として知られることがなくなり、依頼・注文が届かなくなってきた。
なので、通常の和紙ではない、いろんな形でいろんな紙を作っていかないと、なかなか紙を買ってもらえないんですよね。
とにかく日常で使ってもらえるようなアイテムをどんどん作らなきゃいけないなということで、まず最初に取り組んだのが照明でした。
照明は和紙らしく和やかな温かみのある明かりを届けるような作品です。
その他にも和紙が日常生活のどこかにあるようなアイテムを作っていかなきゃいけないなと思い、試行錯誤し、工夫を重ねて今日に至っています。
石州勝地半紙 6代目佐々木さんのこれから
- 作品づくりで心掛けていることを教えてください
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僕の場合は少しでもお洒落な感じで「あ、身の回りに置いてみたいな」と思ってもらえるような作品づくりを心がけています。
「和紙だから買うのではなく、格好いいから買う」というスタンスで物を買ってもらえるようなものづくりを心がけてやっています。
機能性なども今までの工芸品にはなかったものを取り入れてみたり。
例えば、照明なんかでも季節ごとに花やシェードを変えることができるようなものとかですね。
そういう利便性も含めて、皆さんに喜んでもらえるようなものを心がけて作ってます。
さらにクラフトとアートの間みたいな感じの作品を作っていけたらいいなと考えています。
たまたま2023年に今井美術館で作品展をさせてもらいました。
立体的なレリーフのような作品やスケールの大きな草花を利用したような作品なども発表させてもらいました。
アート活動みたいなものも場所を作って発表できるんじゃないかと今感じています。
今後はそんな作品を展開していけたら面白いだろうなと思います。
買っていただいた方に身近に置いてもらい、鑑賞していただけたら嬉しいですね。
石州勝地半紙 佐々木さとみさん
- 猫用ベッドや猫用ハウスを作ったきっかけ何ですか?
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今、工房の看板猫として人気があるチョビちゃんとブンちゃん。
保護した時には段ボールでハウスを作って寝てもらっていたのですが、ある時商品には使わない和紙があったのでこれを猫のベッドにできるかなと思って作ってみたらすごく気に入って入ってくれました。
色和紙の端切れもあったので、これを貼って明るくしたものも作ってみようかなと思い、作ってブログにアップしたら欲しいっていう声が上がってきて。
結構皆さん気に入ってくださったので、じゃあ新しく商品として猫用ベッドとか猫用ハウスを販売しようということになり今に至ります。
- 猫グッズのこだわりは何ですか。
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猫をたくさん飼っていますので、猫の背中がくっついた時に心地よいカーブになるようこだわっています。
買われたお客さまからは、猫がすごく安心して寝てるという声も聞きます。
少し話がそれますが、猫を捨てていく人たちがいて行き場のない猫を保護しています。
里親を募集している猫たちが現在8匹おり、自分の家にも8匹いて、合計16匹の猫たちを世話していく上で猫友さんとの繋がりがあり、保護の活動費としてもその商品をご購入いただいたりしています。
猫を助けているのか、猫に助けられているかっていうような関係性ではありますが、猫が常にいるというような状況で、猫関係の商品が増えてますね。
- これから新しい展開はありますか?
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猫用ベットを見て、人間の赤ちゃん用を作ったらどうかという声を何度か聞きました。猫ハウスに耳を近づけると、貝殻に耳を当てた時の海のさざ波のような音が聞こえるんです。
赤ちゃんがお母さんの胎内にいる時に聴く音に似てるとも言われます。
すごく心が落ち着くのでそれで猫が安心して寝てるのかななんて思うと、赤ちゃんが寝る環境にも適しているのかもしれないなと思ったりしています。
いつかは私が入れるぐらいのハウスにも挑戦したいと思ってます(笑)。
石州勝地半紙について
伝統の技を守りながらも、現代の暮らしに寄り添った新たな可能性を模索する6代目・佐々木誠さん。そして、猫たちとの温かな日常からアイデアを広げる妻・さとみさんの視点。ふたりの想いが、和紙の持つ美しさと機能性を新しい形で私たちに伝えてくれています。
「和紙だから買うのではなく、格好いいからという理由で買ってもらえるようなものづくりをしたい。」という佐々木さんの言葉。伝統工芸の未来を見据えたその考え方には、手仕事への誇りと挑戦が込められていると感じます。
また、さとみさんの猫のために生まれたアイデアがひょっとしたら赤ちゃんのベッド、人の住まいそのものにもまた違った形で広がっていくかもしれない・・・和紙の持つ力がこれからも期待されます。
古き良きものが、現代の暮らしに新たな彩りを添える。
それは、工芸の未来を考える上での大切なヒントでもあります。石州勝地半紙の持つ力強さと優しさに、これからも期待が膨らみます。
「和紙だから買うのではなく、格好いいからという理由で買ってもらえるようなものづくりをしたい。」という佐々木さんの言葉。伝統工芸の未来を見据えたその考え方には、手仕事への誇りと挑戦が込められていると感じます。
また、さとみさんの猫のために生まれたアイデアがひょっとしたら赤ちゃんのベッド、人の住まいそのものにもまた違った形で広がっていくかもしれない・・・和紙の持つ力がこれからも期待されます。
古き良きものが、現代の暮らしに新たな彩りを添える。
それは、工芸の未来を考える上での大切なヒントでもあります。石州勝地半紙の持つ力強さと優しさに、これからも期待が膨らみます。
プロフィール
- 石州勝地半紙
- 699-4431
- 島根県江津市桜江町長谷2696
- 【TEL】0855-92-8118
- 【営業時間】10:00~18:00
- 【定休日】水・木
- 【HP】https://sekishu-kachijiwashi.com/
- 【Facebook】https://www.facebook.com/kachijibanshi/
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