出雲地方では江戸時代に綿花の栽培が盛んになるにつれ
木綿の藍染が庶民の暮らしに根づいていきました。
婚礼の際は嫁入り支度として、筒描藍染という技法で白く模様を染め抜いた
風呂敷、蒲団、たんすを包む油箪(ゆたん)などをあつらえたそう。
かつて高瀬川沿いには紺屋が軒を連ねていましたが
化学染料の登場で藍染は衰退し、現在は一軒を残すのみとなりました。
家紋に鶴亀や松竹梅、宝尽くしなど縁起を祝った模様を描いた
伝統的な嫁入り風呂敷を今も作りつづける長田染工場。
高瀬川のほとりにある工房で、5代目の匡央さんにお話を伺いました。
長田染工場の歴史
- 創業130年の工房の5代目として
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現代の伝統工芸としての藍染は、先人たちが長い時間をかけて創意工夫を重ねてきた集大成で、それを受け継ぐ僕たちがさらに新しい工夫を付け足して、次の世代に繋いでいく責任があります。
創業当時はこの辺りに何十軒もあった紺屋が、化学染料に押されて今ではうち一軒になりました。
昔ながらの筒描藍染をやっているのは、全国でもわずか2〜3軒です。
僕たちが作るのをやめてしまうと、筒描の作品が消えてしまい、作品づくりの過程をリアルに伝えることもできなくなってしまいます。
この工房を守っていくことはもちろん、若い人に「筒描藍染をやってみたい」と思ってもらえるような作品づくりをしていくこと、そしてその魅力を発信していかなくてはと、強く思っています。
- 匡央さんが後を継いだきっかけは
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長男、次男が継がなかったので僕が継ぎましたが、幼稚園に入るまでは「兄弟そろってここで仕事をするものだ」と思い込んでいました。
入園後も、日曜日などはここで父の作業を当たり前に見ていましたね。
当時はもちろん、伝統工芸がどうとかは考えていなかったわけですが。
筒描藍染に関しても詳しくはなく、ただ“藍染している”という感覚でした
他の世界で働こうと思ったことはなく、20歳で染色の学校を卒業した時には、筒描藍染が貴重な技法だと理解していたので、「早く筒描藍染をやりたい」という想いでした。
筒描藍染への思い
- 匡央さんにとってものづくりとは
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自分の持つ感性をどの分野で出力するのか、筒描藍染なのか、あるいは陶芸なのか……
自分のうちにあるものが爆発する、それをもののカタチに表現していくこと、葛藤しながら作品に表現していくことが“ものづくり”だと思います。
- 挑戦してみたいことはありますか
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色々な人とのコラボレーションを通して、僕たちが得意な“描いて染める”ことを生かした新たな商品を生み出し、筒描藍染の可能性を広げていきたい。
モノがあふれている現代では、まったく新しいものを作り出すのは難しいですが、筒描で「これは新しい」と手に取ってもらえるものを作って、「やっぱりいいものを持つと気持ちがいい」という風に感じてもらいたいんです。
それから仕事から離れますが、壁布(へきふ)を作りたいと思っています。
筒描藍染を繋いで一つの大きな絵にして、壁一面を飾ってみたい。
壁だけでなく天井や床、全面を藍染の作品にするのもいいかもしれない。
そんな空間ってどうなんだろうと、とても興味がありますね。
壁画というものは僕にとってロマンチックなもので、それを筒描藍染でやってみたいです。
- SNSもされているが反応は?
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SNSは、お客様や知り合いと触れ合えるコミュニティの場だと思っています。
色々な人と繋がりたいし、「いいね!」してもらえれば他の人の目にも留まりやすくなります。
工房に足を運んでくださる人が年間100人だとしたら、SNSで写真を見てくれる人は一日にするとそれ以上で、それをきっかけに工房に来てもらったり、筒描藍染について知ってもらうことにも繋がっています。
筒描藍染のこれから
- 歴史と伝統を受け継ぎながら進化していくには
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その時代に生きてこられた方たちは、その時代の世界を見て感性を磨いてこられた。
同じように僕たちの時代には、僕たちにしか見えない景色がありますし、僕たちは今と昔、どちらも見ることができるので、感性を磨いて自分が何を作れるか、作っていきたいか、そういう直感的な思いを作品に表現することができたらなと思っています。
伝統の継承はデザインの継承ではなく技法の継承だと思っているので、図案などのデザインは描き手の感性によるものでいいと思っています。
ですから描き手は僕にとってライバルではなくて、むしろ色々な世界観の人が描く筒描藍染を見てみたいという想いがあります。
筒描の線のタッチや描きたいものは、人によって違うわけですから。
現代を生きる僕たちがこれからどんな作品を生み出していくか、僕にとっても非常に興味深いので、この工房だけではなく、色々な人に筒描藍染を受け継いでやってもらいたいと思っています。
- 若い世代にも伝統工芸が広まっている?
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染め物を専攻している美術大学の学生などが見学に来られることがあるんですが、真剣に見学される姿は僕の活力にもなっています。
若い方で工芸に興味がある方がとても多くいらっしゃって、工芸に対して「特別」という感覚があるように感じます。
プレゼントなどの「特別」なものと、ご自身が普段使いするものを分けて考えておられるのかなと。
若い方向けに、今の暮らしに馴染むテーブルランナーやコースターなどを、モダンなデザインを取り入れながら作っていますが、そういう「特別なもの、喜ばれるもの」として手に取ってもらえる作品を、どんどん世の中に出していきたいです。
長田染工場について
藍染には大きく分けて2つの染色技法があります。
糸を染めてから布を織る「先染め」と、生地をそのまま、または模様を描いてから染める「後染め」です。
長田染工場が受け継いでいる「筒描藍染」は、生地に防染糊で模様を描いてから藍染を行う「後染め」の技法のひとつ。
染め上がった生地を水ですすぐと、糊で描かれた部分が白抜きになって模様が現れるのです。
4代目の茂伸さんが筒描をする様子を見学させてもらいました。
代々受け継がれてきた型紙で下絵を付け、筒袋に入れた糊を手で絞り出しながら模様を描き、米ぬかを振って糊を固める……
見ていて緊張してしまうほどの繊細な手仕事は、まさに職人技。
この技法を受け継ぐ5代目の匡央さんを応援する気持ちが、自ずと湧き上がってきます。
この後、藍甕に十数回浸して藍染。
空気に触れて酸化することで青く発色する藍は、繰り返し染めることで青が濃くなっていきます。
最後に工房の前を流れる高瀬川で丁寧に糊を洗い落とし、生地を竹の竿で延ばして乾かすと完成です。
大きいものだと完成まで3週間以上かかるそうです。
工房では昔ながらの風呂敷の使い方を紹介していて、とても参考になりました。
また幾何学模様のコースターをはじめ、現代的なデザインの商品も色々と作られていて、これは若い世代の心に響くだろうなと感じました。
長田染工場の5代目は、先人たちから受け継いだ技法を次の世代へ繋げるために、筒描藍染の新たな可能性に挑戦しつづけるのでしょう。
糸を染めてから布を織る「先染め」と、生地をそのまま、または模様を描いてから染める「後染め」です。
長田染工場が受け継いでいる「筒描藍染」は、生地に防染糊で模様を描いてから藍染を行う「後染め」の技法のひとつ。
染め上がった生地を水ですすぐと、糊で描かれた部分が白抜きになって模様が現れるのです。
4代目の茂伸さんが筒描をする様子を見学させてもらいました。
代々受け継がれてきた型紙で下絵を付け、筒袋に入れた糊を手で絞り出しながら模様を描き、米ぬかを振って糊を固める……
見ていて緊張してしまうほどの繊細な手仕事は、まさに職人技。
この技法を受け継ぐ5代目の匡央さんを応援する気持ちが、自ずと湧き上がってきます。
この後、藍甕に十数回浸して藍染。
空気に触れて酸化することで青く発色する藍は、繰り返し染めることで青が濃くなっていきます。
最後に工房の前を流れる高瀬川で丁寧に糊を洗い落とし、生地を竹の竿で延ばして乾かすと完成です。
大きいものだと完成まで3週間以上かかるそうです。
工房では昔ながらの風呂敷の使い方を紹介していて、とても参考になりました。
また幾何学模様のコースターをはじめ、現代的なデザインの商品も色々と作られていて、これは若い世代の心に響くだろうなと感じました。
長田染工場の5代目は、先人たちから受け継いだ技法を次の世代へ繋げるために、筒描藍染の新たな可能性に挑戦しつづけるのでしょう。
商品ラインナップ
プロフィール
- 長田染工場
- 〒693-0011
- 島根県出雲市大津町1109
- 【TEL】0853-21-0288
- 【営業時間】9:00〜18:00
- 【定休日】不定休
- 【メール】nagatasen@my.izumo-net.ne.jp
- 【HP】https://nagata-indigo.jp
- 【Facebook】https://www.facebook.com/indigoblue.workshop.nagata/
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